既存顧客と休眠顧客、離反顧客
自社の商品やサービス、そして顧客対応の評価を捕捉・検証する手段の一つに顧客満足度(CS)調査があることは既述の通りです(スマサーコラム:AskとListen等)。それは自社の商品やサービスの利用者だからこそ、その評価を実体験・実感として判断できる(収集できる)こと、また、顧客情報や会員登録があるからこそ、調査を無駄なく実際の購入者・利用者に依頼できることが背景にあります。したがって、その時点で顕在する既存顧客
がメインの対象者(回答者)となります。
そして、調査依頼やフォロー営業を続けていたり、登録情報を追ったりしてみると、顧客でなくなっていることが判明するケースがあります。後々に復活すれば休止だったとみなせますが、なかなか戻ってこなければ離反となります。そうした休眠顧客
や離反顧客
に対してその理由・要因を捕捉する調査を企図することもあります。これも、一時的にでも顧客であったからこそ仕掛けることができる、広い意味でのCS調査です。
見込み客・潜在顧客
(一次的だったとしても)実際の購入者や利用者は顧客といわれますが、これは狭義の顧客です。広い意味では(マーケティング的には)、購入や利用に至らなくても、商品・サービスに関心を持ってくれた人、店舗やサイトに訪れてくれた人、検討や問い合わせをしてくれた人も顧客です。これから実際の顧客になってくれる可能性や期待が持てる人たちを、見込み客
とか潜在顧客
と呼びます。
ただ、まだ顧客情報や会員登録がないから、利用実績がないから、この層にCS調査は仕掛けられません。しかし、商品・サービスに対して大なり小なり、認知していて、関心があって、閲覧や照会などなんらかのアクションがあります。それでも、購入や利用に至らなかった。その要因を捕捉・把握できれば、顧客の獲得・増加に大きく寄与することでしょう。従来はこの層をキャッチすること、この層にリーチすることが困難であり、課題でした。
足跡を残す方法・技術の革新
商品やサービスを知ることで見込み客・潜在顧客になり、購入や利用に至って既存顧客・顕在顧客になることは昔も今も変わりませんが、その足跡を記録する方法や技術は大きく変わってきました。来訪や照会があってもその場限りの対応・返答(記録なし)から、営業日報や接客シートの記入(紙への手書き)へ、それがファイル入力(デジタル化
)へ発展、さらにサーバーによる共有(ネットワーク化
)と進化しました。さらに、インターネットの普及・革新によって、商品やサービスのサイト上では、多大な訪問者の閲覧や照会の記録が、評判が自動的に残る環境になりました。
これらの情報を店舗・店員や営業現場・営業担当にフィードバックすれば、営業活動に反映できますし、一方でその接客や営業の対応・経緯・顛末を入力すれば、事例が蓄積して共有できます。ただ、新たな課題と向き合うことになります。データは膨大に蓄積できるようになりましたが、次はそれを連携・抽出・分析する必要性が、その使い勝手に優れるプラットフォーム/ツールの必要性がでてきました。
足跡を辿る方法・技術の革新
顧客の足跡を辿ってその段階・過程を追うことは旅になぞらえて、カスタマージャーニー
と呼ばれ、近年注目されています。例えばそれは、認知→関心・好感→検討・選考→購入・利用→継続・愛着というような旅路です。一昔前には消費者の購買態度プロセスとしてAIDMA
モデルやAISAS
モデルなどが注目されていましたが、表現を変えた代替版とみても差し支えないでしょう。特定・既成のモデル/プロセスに囚われずに、その会社や商品・サービスに応じて設定できることがカスタマージャーニーの利点ともいえます。
シンプルすぎてカスタマージャーニーとはいえないかもしれませんが、見込み客(商談中)→既存顧客(契約中)→離反顧客(破談/解消)という3段階で捉えることも意義はあります。肝要なのは、段階・ステータスを見定め、問題点をおさえ、適切な施策を打つことです。それをしやすい段階の数や設定を考えましょう。
見込客も含めた顧客データや接遇・商談データ、購買・契約データなどの収集と蓄積、連携と抽出、分析と共有には、顧客の段階や時系列の観点・機能を兼ね備えた(いわゆるCRM
)ツールが有効でしょう。時系列で顧客の段階が捉えられる、段階ごとに分析や施策検討がしやすいからです。
最近は、Salesforceをはじめ、様々なプラットフォーム/ツールが開発・登場しています。シェアの高いツール、取引先が使っているツールは、それを優先的に採用してみる利点がありそうです。
■ この記事のライター
石原 公英 (フロンティアマインド代表)
1965年生まれ。
新聞社系総合調査会社でリサーチャー、広告代理店系マーケティング会社でアナリスト、東証上場マーケティングリサーチ会社でマネージャー等を経て、2020年12月フロンティアマインド合同会社設立。